• 副業をすることで将来の年金の不安は解消されるのか?
公開:2022/03/13  更新:2022/03/10

副業をすることで将来の年金の不安は解消されるのか?

2019年に金融庁が公表した市場ワーキング・グループ報告書内で「老後資金として約1,300万?2,000万円が必要」という記載があり、大きな話題となりました。なかには、本業だけの収入では将来に不安を感じ、副業を検討している人もいるのではないでしょうか。そこで、今回は副業で将来の年金の不安が解消されるのかを解説していきます。

年金をもらうためには?

年金をもらう

年金を受け取るためには、厚生年金保険料を支払う必要があります。厚生年金保険料は、労使折半負担のため、加入者50%、企業50%で保険料を負担する仕組みです。企業で働いている場合は、厚生年金保険料として給料から全体の50%分が天引きされるため、特別な手続きを行う必要はありません。厚生年金保険料の負担している金額は、毎月の給料明細などで確認することができます。

厚生年金保険料は、年1回実施される定時決定で算出された標準報酬月額に応じて決まります。標準報酬月額の計算式は、「4月・5月・6月の給与額合計÷3」です。例えば、「4月25万円、5月35万円、6月30万円」の給与を受け取った場合、標準報酬月額は以下のように計算されます。

・(25万円+35万円+30万円)÷3=30万円

つまりこのケースの標準報酬月額は30万円です。日本の保険料率は、2004年から段階的に引き上げられており、2022年現在は上限の18.3%となっているため、「30万円×18.3%=5万4,900円」が毎月の保険料となります。上述したように、厚生年金保険料は加入者と企業で折半するので、給与から天引きされる金額は半分の2万7,450円です。毎月の厚生年金保険料は、給与明細などで知ることができますが、将来受け取れる年金額は「ねんきん定期便」で確認しなければなりません。

ねんきん定期便は、毎年1回、誕生月に日本年金機構からハガキで送られてきます。保険料納付額の累計・年金加入期間・加入実績に応じた年金額がそれぞれに記載されているのが特徴です。年金と一口にいっても老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)の2つがあります。老齢基礎年金の受け取りは、原則として120カ月以上の加入期間(受給資格期間)、老齢厚生年金は老齢基礎年金の受給要件を満たし、被保険者期間が1カ月以上あることが必要です。ねんきん定期便は、50歳以上と50歳未満で様式が異なっており、50歳以上は「老齢年金の種類と見込額(年額)」の項目が追加されています。

ねんきん定期便では、納付した保険料の累計額の確認ができますが、被保険者負担額のみの記載です。また、企業に勤めている場合でも、国民年金「第1号被保険者」の欄に加入期間が記載されていることがあります。その場合は、20歳から大学卒業までの月数などが考えられますが、詳しい加入時期をねんきん定期便だけで確認することはできません。ねんきん定期便では、直近1年分だけ加入区分や保険料納付額などが確認できるようになっています。

ねんきん定期便に記載された年金額は、原則として65歳以上から受け取れる1年間の金額です。つまり合計額が120万円と書かれている場合は、毎月10万円(実際の受給は2カ月に1回)の年金が支給されることになります。2022年時点で国民年金は60歳まで、厚生年金は70歳まで加入できるため、今後も納付期間に応じて金額は増えていきます。年金の仕組みは複雑ですが、ねんきん定期便の見方がわかれば、将来の年金の不安に対して、どのように対策すればよいか見通しを立てることができるでしょう。

将来に備えるためには?

備える

年金は、わたしたちの老後を支える大切な社会保障制度です。しかし、少子高齢化が進む日本において、さまざまな問題も抱えています。ここでは、年金制度の課題と将来に備えるためのポイントを確認していきましょう。

現在の年金制度の課題は?

年金制度は、現役で働ける世代が高齢者を支えることで成り立つ制度です。高度成長期は、若年世代の人数も多く老後の不安を解消できる社会保障制度として支持されてきました。しかし、少子高齢化の加速により世代間格差が生じる「年金問題」が社会問題化してきています。年金問題では、若年世代が高い年金を支払い、高齢者は負担額よりも多くの年金を受給している点が課題の一つです。

なぜ世代間格差が生じたのか?

日本の公的年金では、「賦課(ふか)方式」を採用しており、現役世代が納付した保険料は将来の自分の年金へ還元されるのではなく、現在の受給者の支払いにあてられます。高度成長期であれば、1人の高齢者を複数の現役世代が支えていくことができたため、制度として問題なく成り立っていました。しかし、少子高齢化が進むにつれて現役世代の負担が大きくなっているのが現状です。

実際に、保険料率は2004年から段階的に引き上げられて、2022年現在は上限の18.3%となっています。現在年金を受給している世代のなかには「支払った額よりも受け取る額のほうが多い」といった人もいますが、今後このような逆転現象は発生しません。むしろ、年金制度の運用が悪化すると、さらに受給額が減少する可能性もあるといわれており、不公平感や将来の不安が広がっています。また、日本では今後も少子高齢社会が継続が予想されているため、世代間格差がさらに大きくなることも懸念材料の一つです。

年金問題は解消できないのか?

少子高齢化が改善されない限り、現制度における年金問題の解消は困難です。子どもの数が減るほど、1人の高齢者を支える現役世代の数も減少するため、今後も若者の負担が増えることが予想されます。ただし、年金問題を改善するための取り組みがまったく行われていないわけではありません。

例えば、積み立てられた年金は「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」によって管理・運営されており、その収益は国庫に納付。GPIFは、年金財政の安定に貢献する組織として設立され、年金問題の改善や世代間格差の調整が期待されています。GPIFの運用利回りを年度単位で見ると、大きなマイナスが発生している年もありますが、2020年の名目運用利回り(年率)は3.64%となっており、年金財源の安定に貢献しているといえるでしょう。

年金制度は破綻するのか?

公的年金制度は、制度として多くの問題を抱えています。しかし、国が社会保障制度の一つとして運営管理しているため、破綻する可能性は低いでしょう。ただ、現在と同水準で年金を受け取れない可能性もあります。実際に、厚生労働省の発表によると、少子高齢化が主な原因となり賦課方式の均衡崩壊が発生すると予想されています。

年金制度の今後の見通しは?

年金制度は、破綻の可能性は低いものの、現在より状況は悪くなる見通しです。今後の方針として、支給額の減額は覚悟しておく必要があります。また、日本の65歳以上の人口比率は以下のように増加傾向です。

・1950年:5%未満
・1970年:7%超
・1994年:14%超
・2019年:28%超

高齢化率は、今後も上昇を続けることが予想されています。年金制度においては、1人の高齢者を2人程度の現役世代で支えていくことになるでしょう。さらに、年金制度を維持するために、増税が行われる可能性があります。もちろん、増税の目的は年金制度の維持だけに限りません。しかし、2019年に消費税が10%になった以降も、常に増税の必要性は議論されています。消費税以外にも、今後税負担が増えることを見通してライフプランニングしていくことが必要です。

高齢者の働き方の変化

年金問題は、現役世代の働き方にも影響を与えています。これまでのように、終身雇用かつ年功序列で安定した企業に勤めるだけではなく、将来に備えて副業を始める人も増加傾向です。インターネットの発展と社会情勢の変化を背景に、在宅ワークが推進されたことも副業が広がるきっかけの一つといえるでしょう。対面式の営業や、足を運ぶポスティングの仕事などと並行して、パソコンやスマホだけを使って副業をする人も珍しくありません。他にも、「2つの企業に勤める」「企業に勤めながら個人事業主として活動する」「副業のアルバイトを複数かけ持つ」など、現役世代の働き方も多様化しています。

将来に備えるために

年金制度が抱える問題は、現役世代だけでなく年金を受け取る世代の働き方にも大きな影響をもたらしています。これは、世代に関わらず、老後の資金に不安を感じているからでしょう。少子高齢化が進むとともに、年金制度のさまざまな課題が浮き彫りとなっています。将来の年金の不安を少しでも解消するためには、自分自身で計画的に早いうちから資金を準備することが大切です。

副業をするうえでの注意点

副業を始める前に注意点

年金制度に不安を感じているのであれば、副業をすることで将来に備えることもできます。実際に、新しい生活様式が定着していくなかで、副業を認める動きも加速傾向です。ここでは、副業をするうえでの注意点について解説します。

会社の副業規定を確認しよう

まずは、会社が副業を認めているかを確認します。副業を禁止している会社で隠れて副業をして見つかった場合は、減給や解雇といった処分になることもあるため、必ず事前に副業規定を確認しましょう。また、副業を認めていている会社でも、競合他社での副業や夜間勤務を禁止しているケースもあります。特に、同じような業界・業種での副業は、本業に与える影響が大きいため、禁止されていなくても避けたほうが無難です。

副業の種類を考えよう

副業には、いくつもの種類があります。以下に3つの例を挙げてみました。

・アルバイトやパートなど労働力を提供して給与として受け取る
・マンションなどを購入して不動産運用で利益を得る
・フリーランスとして個人で事業を行う

ほかにも、株式などの配当で得られる「配当所得」などがあります。副業を始める前に、どのような形態で働きたいのかを検討してみましょう。また、副業を行う場合は、本業に支障が出ないように働くことが大前提です。副業をしたことで、本業の信用を失墜させたり、不利益を与えたりすると、場合によっては本業の勤務先から損害賠償を請求させることもあります。そのため、副業をする際は慎重に選ぶことが大切です。

必要に応じて社会保険に加入しよう

アルバイトやパートなど労働力を提供して給与として受け取る場合、要件を満たしていれば社会保険に加入することが必要です。社会保険の加入は、副業先で実施しますが、本業の勤務先にも手続きの連絡が届きます。そのため、本業の勤務先に知られないまま、副業先の社会保険に加入することは難しいでしょう。副業先で社会保険に加入すれば、厚生年金の保険料納付額が合算されるため、将来受け取れる年金額も増加します。

ただし、健康保険・介護保険・労災補償保険などにも加入が必要なため、全体の出費額は増加する点も忘れてはいけません。もし、副業先で社会保険に加入したくない場合は、「週の所定労働時間が20時間以上」「賃金の月額が8万8,000円以上」といった要件を詳しく確認したうえで働きましょう。

社会保険の加入が必要ない副業

副業をすることで、将来の年金不安を完全に解消できるわけではありません。しかし、今後の年金制度のあり方を考えると、自分自身でしっかりと老後資金を準備しておくことが必要です。働き方改革などを背景に、残業時間の削減が求められるようになり、収入が減ってしまった人もいるでしょう。また、感染症拡大防止の観点から在宅ワークが増えて、自由な時間が増えた人もいるかもしれません。

「収入を増やしたい」「時間を有効活用したい」という人は、ぜひ副業も選択肢の一つとして考えてみましょう。収入を得られるだけでなく、本業に活かせるような新しいスキルを身に付けることができれば、大きなステップアップとなります。より良い老後を迎えるために、副業を始めてみるのもおすすめです。

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