• 在宅ワークをしている人の就業推移に関する情報
公開:2022/09/05  更新:2022/09/01

在宅ワークをしている人の就業推移に関する情報

労働人口が減少している現在において、時間に縛られず働く人に最適な労働スタイルの一つが、在宅ワークです。ここでは、テレワークに代表される在宅ワークの就業推移に関して、都道府県別や海外の状況も合わせながら、紹介していきます。

2020年までの在宅ワークに関する歴史

在宅ワークのベースになっているテレワークは、1984年に日本電気株式会社が初めて導入した歴史があります。しかし、会社に通勤して働くのが一般的の日本社会では、テレワークという言葉はなかなか普及しませんでした。そのため、1991年に総務省の前身となる郵政省、経済産業省の前身である通産省に加え、国土交通省の前身となる国土省及び建設省によって、日本サテライトオフィス協会が設立されたのです。日本サテライトオフィス協会の設立から6年後に、郵政省に勤務する国家公務員を対象とした、テレワーク勤務実験が初めて実施されました。

2000年には、日本サテライトオフィス協会が名称を社団法人日本テレワーク協会に変更、2005年にテレワーク推進フォーラムが設立される等、テレワークを行うための環境づくりが、政府手動で進んでいきます。その間、日本でも高速通信ができるようになる等、インターネット環境が急速に発達していきました。加えて、リーマンショック等によって会社によるリストラが相次いでいくという、労働環境の深刻化も重なり、次第に在宅ワークをしていこうという機運が起こってきました。

2014年、日本政府のIT総合戦略において、「世界最先端IT国家創造宣言」を発表し、ワーク・ライフ・バランスの実現と、雇用形態の多様化が盛り込まれたのです。具体的には、情報通信技術を活用する形で、時間や場所にとらわれず働ける手段として、テレワークを社会全体に波及させる取り組みが該当します。しかし、少子高齢化の進行と労働人口の減少に伴う、会社での勤務時間が長期化、とりわけ残業時間の増加が社会問題化したため、2019年に働き方改革関連法が施行されました。

ただ、在宅ワークを推進する取り組みや、法律によって残業時間を減らそうと国が主導しても、在宅ワークという働き方にシフトしようという動きは、全く見受けられなかったのです。実際、総務省の調査による、テレワークを導入する企業の割合を見ると、2017年で13.9%ですが、2018年に19.1%に増えたものの、2019年でも20.2%と、テレワーク勤務推進の企業は少数派でした。最もテレワーク勤務に積極的な東京都でも、2019年の導入率で25.1%と、7割強の企業がテレワークに消極的な姿勢が目立っています。

2020年に在宅ワークを取り入れる企業が増えた

しかし、2020年に感染率が高く、健康状態によっては命が奪われる可能性がある、コロナウイルスが蔓延すると、多くの企業が在宅勤務という形を採用しました。それまで、出社して社内で働くといったスタイルが一般的な労働環境が、一変して自宅での勤務に切り替わった瞬間です。日本政府は、2014年の「世界最先端IT国家創造宣言」にて在宅ワークを2020年までに普及させるという目標を掲げていました。そういった点から捉えると、コロナウイルスといった外部要因が大きく影響しているものの、在宅ワークの社会的普及という、当初の目標は達成したと言えます。

国民の生活に大きな制約を与える緊急事態宣言が発令されると、会社への通勤がしにくくなるため、多くの企業はテレワークでの勤務を促進するようになります。日本を代表する通信企業のNTTグループは、2020年2月17日から、月8回まで認められていた在宅勤務の上限を撤廃、最大20万人のテレワーク勤務を推奨しました。製造業を営むメーカーでも、日清食品グループに在籍する約3,000人の社員のうち、工場勤務を除いた社員を、在宅勤務に切り替えるといった取り組みを行っています。

2020年度におけるテレワークの普及率は、コロナウイルスの拡大前と緊急事態宣言発令時、宣言解除後の3段階で大きく変動しています。コロナウイルスの拡大前は、2019年よりも少し高い25%で、多くの企業はテレワーク導入に消極的でした。最も高い普及率を示していたのは、2020年4月から5月の緊急事態宣言発令下で企業の半数が実施、全国に拡大された後は7割程度となっています。ただ、緊急事態宣言が解除されると、テレワーク普及率は30%台前半にまで落ち込んでしまいました。

東京都の企業でも同じような傾向が目立ち、緊急事態宣言が発令される前の2020年3月は24%と、比較的低水準でした。しかし、緊急事態宣言が発令されると、同年4月で62.7%の企業が実施するようになったのです。東京都並びに周辺3県の発令期間が長かったのも影響していますが、その後は、40%台後半から60%台前半と高水準で推移している点が、大きな特徴となります。ただ、テレワークの実施率は都道府県によって大きな差が生じており、全ての都道府県が東京都と同じ水準で実施しているとは限らないのも事実です。

2020年11月にテレワークが実施された割合を都道府県別に見た場合、東京都が45.8%と半数近くの企業が実施している以外は、他の道府県は30%台前半から3%台と、大きな差があります。例えば、神奈川県では34.9%、千葉県なら26.2%というように、大阪府や埼玉県、愛知県では20%強の実施率を記録しているといった具合です。1都3県や大阪府、愛知県以外の企業でのテレワーク実施率は2割を切っており、最も高い兵庫県や宮城県でも19%台、山形県や京都府で17%台となっているのが特徴です。

さらに、テレワーク実施率が1割を超えているのは20都道府県にすぎず、政令指定都市を抱えている岡山県や新潟県であっても、実施率は9%台という状況となっています。高知県や三重県といった、8%台の県が目立つ中で、最も実施率が低い和歌山県が3%と、際立っている点が特徴です。テレワーク実施率が高い東日本に比べ、実施率が低い府県が多い西日本での認知度向上が、テレワークの将来性を考える上で、喫緊の課題となります。

アメリカ合衆国やドイツでは日本よりも普及率が高い

テレワークの普及率を、海外の状況と照らし合わせてみると、一部の国では日本を超える普及率となっています。日本よりも高い普及率を記録している国は、アメリカ合衆国およびイギリス、そしてドイツですが、いずれの国も、日本の19.1%を超えている点が特徴です。85%という高水準の普及率を誇るアメリカ合衆国の場合、経営やマネージメント系業種に属する人の24%が、テレワークでの仕事に移行しているという実態があります。ウェブデザイナーやエンジニア、弁護士といった専門職でも、14%がテレワークでの仕事をメインとしています。

一般的に、日本の企業ではテレワーク業務を導入しにくいと言われますが、一つの職種に限定せず、複数の仕事内容を経験させるメンバーシップ型の育成方針が影響しているのが、最大の原因です。対して、アメリカ合衆国では仕事に必要なスキルを有している人を優先採用するジョブ型雇用がベースとなっているためで、複数の仕事を経験しているかどうかは問われないのが、一般的となります。パソコンがあれば大部分の業務に対応できるといった性質もあり、テレワーク業務を導入しやすい環境が整っています。

コロナウイルス対策と並行する形で、テレワーク業務を推進する方針に傾斜したドイツでは、21.9%という普及率を記録しました。社会的な接触を制限するための政策により、年間最低24日の在宅勤務を認める法律が施行されています。そういった政策の影響もあり、ドイツ国内の労働者のうち、25%が在宅ワークをするようになりました。国民の安全を守るため、労働者の視点に立った法整備を行った結果が、テレワークの普及率向上へとつながっています。

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