• フリーランス・副業にChatGPTを使うときの注意点
公開:2024/05/31  更新:2024/05/30

フリーランス・副業にChatGPTを使うときの注意点

OpenAIが開発したサービスChatGPTは生成AIの一種で、ユーザー側が入力した質問・命令に対し、その場で作り出した解答を返してくれるサービスです。ChatGPTを使えば、長文の記事やプログラムコードの作成が数秒でできてしまいます。2024年にはファイルを読み込んだりWeb検索をしたりする機能も追加され、利便性は向上しています。ChatGPTを仕事へ使用する時の注意点を紹介します。

クライアント側がChatGPTの使用を許可していない場合がある

チャットGPT

まずは、クライアント側がChatGPTの使用を許可しているかどうか、仕事前に確認することが非常に重要です。
会社員として仕事をしているなら、職場のルールで決められたChatGPTの使い方を守る必要があります。一方業務委託契約など雇用関係のないフリーランスでも、クライアント側が契約上禁止している事項に抵触しないよう納品物を作ることが大事です。クライアントがChatGPTをはじめとする生成AIを使用して納品物を作成することを認めていない場合は割とよくあります。にもかかわらずChatGPTを仕事に使うと信頼関係が破綻してしまいます。
後述しますが、ChatGPTには様々なリスクがあると指摘されており、クライアント側がChatGPTの使用を禁止するにはそれなりの訳があります。禁止事項を破った結果何らかの損害が発生する可能性もあるため、このようなリスクはできるだけ避けるべきです。
またクライアント側が生成AIの使用について何も言及していないから、といって自己判断でChatGPTを使ってしまうのもおすすめできません。ChatGPT等の生成AIを仕事に使う場合は、どのような使い方をするのか、およびChatGPTのリスクへの対処法を合わせてクライアントに知らせ、あらかじめ使用許可を求めておくと安全です。

情報漏洩の危険性がある

二つ目の注意点は、ChatGPTに内在する情報漏洩の危険性について理解することです。
ChatGPTは、ユーザーから入力された質問や命令を学習し、機能を進化させます。しかし、これは個人情報や企業秘密の外部漏洩にもつながりかねない仕組みです。
例えば顧客情報のリストを作るという副業をChatGPTに代行させた場合、クライアントの知らぬ間に顧客の個人情報が海外企業に漏れてしまう危険性があります。個人情報の漏洩は現代では企業にとって大きな不祥事になり、受注側も責任を問われることになるでしょう。クライアントから託された情報をChatGPTに入力してもよいのかどうかは、慎重に判断すべきです。
なお、ChatGPTでは会話の内容をトレーニングに利用しないオプション設定が利用できます。この設定を使うことで、ChatGPTの使用を許可してくれるクライアントもいるかもしれません。いずれにせよ、どのような情報ならChatGPTに入力してよいのか、仕事前にクライアント側に確認しておきましょう。

著作権違反の可能性がある

著作権

三つ目の注意点は、著作権に関係があります。
ChatGPTなどの生成AIは、全くの0から答えを作り出しているわけではありません。膨大な学習記録をデータ元として、文章やプログラミングコードを作成しているのです。そのデータ元として使われている記事や書籍、プログラミングコードに著作権があるため、ChatGPTが著作物と非常に似ている制作物を出力する可能性は十分あります。また、過去あなたと同じような質問を入力したユーザーが類似の出力結果を受け取る可能性もまた排除できません。

実際OpenAIの利用規約(2024年1月31日発効バージョン)には、次のような記述があります。

「本コンテンツの所有権限 お客様とOpenAIの間において、適用法令で認められる範囲で、お客様は、(a)インプットの所有権限は保持し、(b)アウトプットについての権利を有するものとします。当社はアウトプットに関する権利、権原、及び利益がある場合、これらすべての権限をお客様に譲渡します。

本コンテンツの類似性 当社の本サービス及び一般的な人工知能の性質上、アウトプットは特有のものではない場合があり、他のユーザーが当社の本サービスから同様のアウトプットを受け取る場合があります。上記の当社による権限譲渡は、他のユーザーのアウトプット又は第三者アウトプットには適用されません。」

引用元:OpenAI.利用規約.2023年11月14日 https://openai.com/ja-JP/policies/terms-of-use/(アクセス日2024/05/25)

この規約では、ChatGPTのアウトプット(出力)についての権利はユーザー側が有しているという一方で、アウトプットに類似性があることについても言及しています(規約はたびたび変更されますので、最新のものをご確認ください)。

ChatGPTで作成したモノはオリジナルでない可能性があるのです。

そのため、ChatGPTで得た出力結果を成果物として納品する前に、まず類似の作品・記事・プログラムコードなどが公開されていないかを確かめる必要があります。

嘘の情報や根拠のない答えを返してくることがある

四つ目の注意点は、ChatGPTの出力結果の信憑性です。ChatGPTは、時に嘘の情報や根拠のないことを「まるで本当であるかのように」解答してくることがあります。これは「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる現象で、ChatGPTの問題点としてよく知られています。
例えば、実在しない店舗をおすすめしてきたり、古い情報を現在の情報として答えたりすることがあります。過去のChatGPTは事前に入力した情報から出力結果を作成していたため、この傾向は特に顕著でした。アップデートされたChatGPT-4oではWeb検索が可能になったので、最新の情報にも対応できるようになってきています。ただし、それでも間違いがまったく無くなったわけではありませんし、ChatGPTが参照しているWebサイト自体の信憑性が怪しい場合もあります。学習過程で集めたソース元に誤情報が紛れ込んでいて、これをChatGPTが覚えこんでしまう可能性も考えられます。
ChatGPTの厄介な点は、誤情報でも説得力のある文章にして出力してくることです。時には、参考文献や参考URLまで一緒に応えてくるので、あたかも強い根拠の元に出力結果が作られたように見えます。しかし、実際にはそんな参考文献は存在しなかったり、Webサイトの中身が出力結果とはずれたものであったりするパターンもあるのです。
もしChatGPTで調べ物をするなら、少なくとも次の二点を確認してください。

・ChatGPTに出力結果の情報源を求めること(例:「○○について答えてください。答えの元になった参考文献やURLも教えてください」)
・示された情報源が実際に存在し、出力結果を補償するものであるかどうか確認すること

またChatGPTを使って文章を書く場合は、中に書かれている情報が本当に正しいかどうかを確認しなければなりません。プログラミングコードを出力した場合は、エラーやバグがないか、危険なコードが含まれていないかをチェックする必要があります。
このように出力結果の信憑性を確かめる作業はなかなか時間がかかります。そのため、0から記事やプログラムなどの成果物を作らせるのはかえって効率が悪くなるかもしれません。

質問を工夫しないと精度の良い解答が返ってこない場合がある

五つ目の注意点は、ChatGPTへの質問の仕方にあります。
ChatGPTでより良い出力結果を得るには、ChatGPTが理解しやすいような質問をしなくてはなりません。ただ漠然と質問しただけでは、出力結果も曖昧になりがちです。
望んだ出力結果を得るための質問の仕方に関する技術は「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれています。ChatGPTで仕事を効率化するためには、プロンプトエンジニアリングを学び、細かい条件を指定して質の高い出力結果を得る必要があるでしょう。
例えば、「キリンについての記事を書いて」と指示しても、誰を対象にしているのか、記事を書く目的は何なのかがChatGPTには伝わりません。記事のクオリティを高めるには、次のようにできるだけ詳細な命令文を書く必要があります。
「キリンについての記事を3000字で書いてください」
#想定読者
幼稚園から小学生ぐらいのこども
#文字数
1000文字
#記事の目的
記事を載せる○○動物園に興味を持ってもらうこと
#記事の構成
##キリンの大きさ
##キリンの食べ物
##キリンの一生
##○○動物園でのキリンのイベント
###キリンの餌やり体験
###キリンショー

一度上のようなテンプレートとなる質問文ができてしまえば、後は使いまわせるので楽です。

仕事場全体でChatGPTに使える質問文を考え、業務効率化を目指しているところもあるでしょう。ただフリーランスや副業でChatGPTを使おうとする場合は、たった一人でプロンプトエンジニアリングについて学ばなくてはならないことも多いです。上手くChatGPTをコントロールできなければ、質問を繰り返しても望まない解答ばかりが積み重なることもあります。
仕事にあてる時間が限られている副業の場合、ChatGPTを使うことが本当に自分の時間の節約になるのかは一度立ち止まって考えるべきでしょう。
自分の価値を低下させてしまう危険性がある
最後の注意点は、フリーランスや副業で仕事をしている人にとって、ChatGPTが強力なライバルになってしまうという点です。
近年は、AIに仕事を奪われる職業という話題がよく聞こえてきます。データ入力、動画編集、ライティング、イラスト制作、プログラミングなどは、フリーランスや副業で携わっているという人も多いのではないでしょうか。ChatGPTでこれらの業務が効率化できるとなれば、企業側は人と契約するよりもChatGPTを使うことを選択するかもしれません。そのため、フリーランスや副業でChatGPTに業務を代行させていると、企業側に人と契約することのメリットを感じてもらえなくなる可能性が出てきます。
ChatGPTと競争する立場の人間としては、クライアント側に生成AIでは不可能なことを「できる」とアピールすることが大事になってきます。例えばWebライターなら資格を活かして専門的な監修記事を書いたり、実際に体験したこと、取材したことをもとに記事を執筆したりできるというアピールができます。ChatGPTは有資格者を名乗れませんし、体験記事は人間にしか書けないからです。このように人間ならではの特性をアピールポイントにすることは、生成AIに勝つ一つの手段です。
また逆にChatGPTを使いこなせるだけの訓練を積み、AI業務の専門性を高めるという道もあります。ChatGPTは前述した通り著作権違反や誤情報のリスクがあります。また、単純な質問だけでは精度の高い回答を得られないこともしばしばです。クライアント側がChatGPTを使って業務を効率化しようとしても、上手くとは限らないわけです。
そこで、「ChatGPTが出力した情報の正誤を確認するスキル」や「精度の高い回答を得られる質問のスキル」を高め、そのスキルを持ってクライアントの問題を解決できるようにするのです。話題のChatGPTを上手に使いこなせるスキルは、強いアピールポイントになる可能性があります。
今回は、フリーランスや副業にChatGPTを使う上での注意点を紹介しました。クライアントとトラブルにならない使用方法を考えていきましょう。

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