• 在宅ワークとは?在宅ワーカーとのトラブルを防いで円満な関係を築こう!
公開:2022/08/04  更新:2022/07/31

在宅ワークとは?在宅ワーカーとのトラブルを防いで円満な関係を築こう!

在宅ワーカーの活用には、人材を雇用するのためのコストの削減や繁忙時の労働力の調整など様々なメリットがあります。今後ますます活躍が期待される在宅ワークを、企業が上手く運用するにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、在宅ワーカーとの付き合い方についてもご紹介します。

在宅ワーカーを活用するときには契約書が必要

在宅ワーカーとのトラブル

厚生労働省は仕事を注文する側と在宅ワーカーのトラブルを未然に防ぎ、在宅ワークの環境を良好なものにするために「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を設けています。これは、注文者と在宅ワーカーが契約を結ぶ際の最低限のルールが示されたものです。注文者とは在宅ワークを在宅ワーカーに注文する人のことですが、主に企業を指します。注文者には、他人の仕事を請け負って在宅ワーカーに委託する仲介業者も含まれます。

このガイドラインの定義によれば、在宅ワークとは情報通信機器を活用した請負契約に基づくサービスの提供などのことで、在宅で行う形態の仕事を指します。具体的には、データ入力やテープ起こし、ホームページの作成などです。これらの在宅ワークを請け負う人を在宅ワーカーと言います。保護の必要性が高い人が対象ですので、事業者性の高い法人や他人を使用している場合はこのガイドラインの対象外となります。

注文者が在宅ワーカーと請負契約を締結する際には、契約内容について在宅ワーカーと協議した上で内容を決定しなければなりません。契約条件は文書にして在宅ワーカーに交付する必要があります。記載内容についても決められており、「注文者の氏名、所在地、連絡先」「注文した仕事の内容」「報酬額、報酬の支払期日、支払方法」などを含む、このガイドラインが定める10項目の明示を要します。これによって、在宅ワーカーが確実に注文者と連絡が取れるようになり、仕事の内容や報酬の支払いなどを明確にすることでトラブルの発生を防ぐことが可能です。また、在宅ワーカーの責任の範囲についても明らかにされています。

注文者はメールによって契約内容を在宅ワーカーに提示することができますが、求められた場合には文書で交付しなければなりません。交付した文書は3年間保存する義務があります。報酬の支払い期日は成果物を受けとった日から30日以内で、長くても60日以内の支払いとなります。報酬額は最低賃金などを参考にして、在宅ワーカーが適正な利益を確保できるようにしましょう。在宅ワーカーの労働時間の目安は1日8時間です。継続的な注文の打ち切りの際には、在宅ワーカーの生活への影響を考慮した速やかな事前の予告が必要です。事前の予告には、打ち切りの理由も含まれます。契約を変更するときには両者で十分な話し合いを行い、新たな文書を交付します。在宅ワーカーが変更に応じない場合にも不利な取り扱いをせず、これまでの契約内容を守らなければなりません。

在宅ワーク運用の注意点

在宅ワークの運用には注意点もあります。仕事の請負契約は、あくまで対等な立場でのものです。そのため、注文者には在宅ワーカーに対する命令権はなく、命令や指示を出す場合には直接雇用か労働者派遣契約を結ばなければなりません。偽装請け負いとみなされると罰則もあります。在宅ワーカーは企業の指揮命令下にはありませんが、必要な打ち合わせに応じるなど在宅ワーカーの業務遂行に協力することが望ましいとされています。

在宅ワーカーの個人情報の取り扱いも注意すべき点です。個人情報に関しては、個人情報の保護に関する法律があります。この法律での個人情報とは、名前や住所などだけを指すものではありません。特定の個人を識別できる情報は、すべて個人情報です。人種や病歴、信条など不当な差別や偏見などの不利益が生じる恐れのある個人情報も含まれます。在宅ワーカーの個人情報の取り扱いは業務に必要な範囲に限定し、本人の同意を得ることなく使用目的を超えた使い方をしないようにしましょう。漏えいなどが起きないように個人情報の安全管理に必要な措置を講じるとともに、個人情報の保護に関する法律を遵守することも大切です。

VDT作業は、労働衛生の現場で使われる言葉です。VDTは「Visual Display Terminals」の頭文字を取ったもので、文字やグラフィックを表示できるコンピュータの出力装置の1つです。VDT装置を使った作業をVDT作業と言いますが、在宅ワークの仕事はこれに当たります。厚生労働省は「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を作成しており、労働者の負担を軽くし支障なく働けるようにするために事業者が自主的に講じるべき措置が示されています。VDT作業では眼精疲労や腰痛などが起こりやすいため、注文者は在宅ワーカーに対して作業時の照明や休憩の取り方などの適正なVDT作業の実施方法や、腰痛防止対策などの情報提供をすることが求められています。

担当者を決めて在宅ワーカーからの問い合わせや苦情の窓口を設けるとすぐに相談できるため、問題を早期に発見できてトラブルを未然に防げます。契約書には会社の住所や連絡先が書かれていますが、それとは別に担当者の名前と連絡先を知らせておきましょう。苦情を受けたときは問題が大きくなる前に在宅ワーカーと十分な話し合いを行いますが、自主的な解決を図れるように普段からコミュニケーションを取るよう心がけておくことも大切です。

在宅ワーカーとの付き合い方は?

個人の事情に合わせて柔軟に働くことができる在宅ワークは社会的な関心や期待も大きく、将来的にますます需要が高まることが予想されます。在宅ワーカーには結婚や育児のために退職した能力が高い女性も多いため、その活用は国も支援しています。しかし、運用方法を間違えると在宅ワーカーとの間での思わぬトラブルにつながります。自社ではできない専門的な業務を在宅ワーカーに任せている場合には、担当者も納期や作業内容に見合った報酬の見当がついていないこともあるでしょう。在宅ワーカーが想定していたよりも難しい作業だった場合には、しばしば納期が遅れるという事態が発生します。納期が遅れればあとの仕事に差し支え、結局は注文者が進捗を調整しなければならなくなります。このような事態を避けるため、在宅ワーカーと十分な話し合いをした上で契約書を交付することが大切です。

契約を交わす前の段階でのトラブル対策としては、募集時に業務遂行能力を持った信頼できる在宅ワーカーを探すことがカギになります。募集時には、業務の内容や求めるスキルなどをわかりやすい仕様書にしておくと誤解が少なくなります。実際の選定ではスキルや資格、経験などを確認することや作業環境、1日に働ける時間などもチェックする必要があります。応募者と話す中で、コミュニケーション能力の有無も確かめましょう。複数の在宅ワーカーに仕事を依頼する場合には、一定水準以上のスキルがあるかも確認しなければ仕事にばらつきが出てしまいます。

ある約150人の在宅ワーカーを活用している企業では、まずウェブ上のフォームに職務経験や志望動機などを記入してもらい審査しています。審査では職務経験だけでなく、チームでの仕事の向き不向きも見ます。志望動機で重視されるのは、在宅で仕事をする妥当性です。実技試験では、一定の期間を設けて課題を提出してもらいます。それに合格すると、最後は面接です。この企業では全国に点在する応募者に出張などを利用して社長が必ず会いに行くようにしています。1か月の応募者は20人から30人ほどですが、実際に採用になるのは年間で十数人に過ぎません。良い人材を確保するには時間と労力を要しますが、妥協せず忍耐強く人材を探すことによって自社のクライアントにも質の高いサービスを提供することができるでしょう。

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