• 個人事業主の年金対策を5つ紹介!税制優遇についても解説します
公開:2023/08/20  更新:2023/08/10

個人事業主の年金対策を5つ紹介!税制優遇についても解説します

個人事業主は国民年金に加入していますが、それだけでは将来もらえる年金が心もとないと感じる人は少なくないでしょう。今回は老後の生活に困ることがないように、将来受け取る公的年金を手厚くする方法や公的年金以外の年金対策についてご紹介します。

個人事業主は年金が少ない?

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#個人事業主の年金は基本的に「国民年金」のみ
日本の年金制度は3階建てになっているという解説を耳にしたことがある人もいるでしょう。年金制度は国民年金、厚生年金、私的年金の3つの階層に分かれており、全ての人が必ず加入するのが年金制度の1階部分にあたる「国民年金」です。会社員は国民年金に加えて「厚生年金」に加入し、国民年金と厚生年金両方の保険料を社会保険料として毎月支払っています。つまり、基本的に会社員は国民年金という1階部分に加え、厚生年金という2階部分が上乗せされた年金制度で将来に備えているのです。一方、個人事業主の場合は国民年金のみのため、厚生年金というプラスの年金が受け取れる会社員とは年金額に差が生じます。

#国民年金ではどれくらいもらえる?
国民年金は公的年金制度の1つで、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人に加入が義務づけられています。国民年金では老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の3種類の年金があります。老齢基礎年金は65歳から受け取れる年金です。障害基礎年金は病気や怪我によって障害を持った状態になった時に受け取れる年金で、遺族年金は国民年金の加入者が亡くなった時に遺族が受け取れる年金です。

国民年金保険料は、収入や所得に関係なく支払う必要があります。国民年金の保険料は毎年見直しが行われており、金額は変動しますが、2023年度の国民年金保険料は1か月あたり16,520円です。受け取る国民年金の年金額は、国民年金を納付した月数に応じて計算されます。例として、2023年度では老齢基礎年金の満額は67歳以下の人で月額66,250円、68歳以上の人で月額66,050円支給されています。

しかし、支給される年金額は物価変動率を用いて改定されるため、将来受け取る際にいくら支給されるかについては確定ではなく、あくまでも概算として見積もっておくと良いでしょう。とはいえ、2023年度の支給額である月額およそ66,000円では、生活するのは難しいと感じる人は多いのではないでしょうか。特に個人事業主は公的年金が国民年金のみのため、将来安心して暮らす上で資金対策は欠かせないと言えるでしょう。

#国民年金のみでも年金額を増やせる
国民年金のみであっても、受給開始時期を繰り下げることで年金額を増やすことが可能です。国民年金は原則65歳からの受給ですが、受給期間の延長により66歳から75歳まで最大10年間繰り下げることができます。繰り下げることによって、繰り下げた月数×0.7%が年金額に加算されます。個人事業主は定年がないため、生涯現役で働いて少しでも長く仕事を続け、受給開始時期を繰り下げることで年金額を増やせるでしょう。

個人事業主の公的年金を手厚くする5つの方法

年金を手厚くする方法

個人事業主の将来の資金対策としては、「付加年金」「国民年金基金」「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「個人年金保険」「小規模企業共済」の5つの方法があります。それぞれ具体的に見ていきましょう。

#付加年金
付加年金とは、国民年金の保険料にプラスで付加保険料を納付することで年金額を増やすことができるものです。付加保険料は月額400円で、付加年金は200円×付加年金保険料納付月数で計算し、老齢基礎年金に上乗せされます。例えば、20歳から60歳までの40年間付加保険料を納付した場合、付加年金として200円×480か月で96,000円が年金に加算されます。保険料に対して受け取れる額の割合が高いのが特徴です。ただし、次にご紹介する国民年金基金との併用はできないため、どちらを利用するのか検討する必要があるでしょう。

#国民年金基金
国民年金基金は公的年金の一種で、個人事業主が将来の年金を増やすための制度です。毎月一定の掛金を支払うことで将来掛金に応じた額の年金がもらえるようになるもので、国民年金に上乗せして積み立てられるのが特徴です。初めに日本の年金制度は3階建てとご紹介しましたが、その2階部分に相当するのが国民年金基金です。会社員の2階部分は厚生年金でしたが、個人事業主には2階部分は存在しませんでした。国民年金基金は個人事業主と厚生年金に加入している会社員との将来の年金額の差を解消するために、平成3年に創設されたものです。国民年金基金に加入できるのは20歳以上60歳未満の個人事業主等のため、会社員は加入できません。まさに個人事業主のための年金制度だと言えるでしょう。

国民年金基金は、口数によって年金額を自由に選べます。掛金は支払い期間が終わるまで固定のため、途中で増額されることもなく安心です。また、給付の型も国民年金と同様に65歳から一生涯受け取れる終身年金をはじめ、一定期間年金を受け取れる確定年金など7種類から選択できます。加入後にも口数の増減による年金額の変更や受取期間の変更ができるため、自分の希望に応じたプランが立てられるでしょう。また、国民年金基金の特徴としては加入時の予定利率で運用され、加入時に約束された年金額を受け取れるため、将来の資金額が確定していることが挙げられます。世の中の変動に左右されることなく確定した年金が受け取れるため、将来の備えに対する見通しが立てやすいでしょう。

注意点としては、一度加入すると基本的に途中で脱退できないことです。そのため、経済状況によって掛金の支払いが難しくなった際でも最低1口分は払い続ける必要があります。どうしても掛金が支払えない状況になった場合は、支払いを止める手続きを取ることも不可能ではありません。支払いを止めた場合は、2年以内であれば追納が可能と救済措置も講じられています。掛金の増減は自由にできるため、余裕がある場合は口数を増やして将来への備えを徹底するのも良いでしょう。掛金の上限にも条件があり、国民年金基金と合わせてiDeCoを利用する場合は、掛金の上限がiDeCoとの合算となるため注意が必要です。

#iDeCo(個人型確定拠出年金)
公的年金制度による備えだけでは不安な場合は、自分で運用ができる「私的年金制度」の利用も検討してみると良いでしょう。個人事業主が利用できる私的年金制度の1つに、iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。原則として日本に住んでいる20歳以上65歳未満の国民年金被保険者、国民年金に任意加入している海外居住者であれば誰でも加入できます。月々5,000円から始められ、毎月自分で定めた掛金を積み立てて運用し、将来の資金を準備していくものです。投資信託や定期預金、保険商品の中から組み合わせや配分などはもちろん、運用先も自分で決められます。そうして運用した資産は原則60歳以降、年金や一時金として受け取れるようになります。うまく運用できれば、老後の資金を大きく増やせるでしょう。

その一方、運用次第では元本割れの可能性もあります。加入の際はリスクについても考慮し、元本保証の運用商品を選ぶなどすることでリスクが軽減できるでしょう。iDeCoの注意点は他にもあり、ほとんどの商品が一生涯の年金ではないということが挙げられます。年金として受け取る場合は受け取り期間が決まっているものがほとんどのため、一生涯受け取れる年金を希望する場合は終身年金の商品を選択しましょう。また、60歳まで資産の引き出しができないことにも注意が必要です。iDeCoは主たる目的が老後資金の準備のため、掛金や運用益といった資産は原則として60歳まで引き出せないことになっています。iDeCoで運用する資産は、いつでも引き出せる預貯金を別に確保した上で、余裕をもって準備することが大切です。

#個人年金保険
個人年金保険は、個人事業主が利用できる年金制度の1つです。民間の保険会社が提供する金融商品で資産を運用し、積み立てた保険料を原資に将来受け取る年金を運用していきます。保険料の運用方法によって定額型と変額型が選べ、年金の受給方法も確定年金と終身年金などから選べるため、自分に合った個人年金保険の商品が見つかります。国民年金だけでは不安な不足分を補えるでしょう。個人年金保険もiDeCo同様、商品によっては元本割れのリスクがある点には注意が必要です。

#小規模企業共済
小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金制度です。掛金に応じて事業の廃業や退職時、あるいは65歳以上で掛け金を180か月以上払い込んでいた場合に、積み立ててきた資金を退職金として受け取れます。掛金は月1,000円から70,000円まで、500円単位で自由に設定できます。経営状況等に応じて増額、減額も可能です。また、納めた掛金額に応じて最大2,000万円以内の貸付が受けられるのも小規模企業共済の特徴です。貸付は一般貸付制度をはじめ、緊急経営安定貸付や傷病災害時貸付など様々な種類があり、万一の時の資金調達も安心です。利率は年1.5%と低く、急な出費が必要になった際に利用しやすいのが魅力でしょう。

注意点としては、掛金の支払い月数が少ない場合は掛け捨てとなる場合があることです。また、納付月数が240か月未満の場合、共済金が掛金よりも下回る給付となり、元本割れとなってしまう点にも注意しましょう。

#早めの年金対策がポイント
いずれの年金対策に関しても、預入期間が短いと受け取れる金額が少なくなったり、掛金を下回ってしまったりする可能性もあります。そのため、将来受け取る予定の年金見込み額を確認し、不足分に関してはなるべく早く資金の準備を始めることが大切でしょう。

税制優遇はある?

税制優遇

個人事業主を被保険者とした生命保険や金融商品は、必要経費として計上することはできません。しかし、確定申告書において「生命保険料控除」として、所得税控除が可能です。国民年金をはじめ、国民年金基金やiDeCoなど年金対策として利用できるものの多くは社会保険控除や生命保険料控除といった所得税の納付額を減額できるものが多いです。それぞれ具体的にご紹介していきます。

#国民年金
国民年金の場合、確定申告の際、支払った保険料の全額が社会保険料控除となります。控除されることで課税所得額が減り、所得税と住民税を抑えることにも繋がります。

#国民年金基金
国民年金基金の掛金は、全額が社会保険料控除の対象です。掛金は月額上限が68,000円、満額では816,000円となるため、かなり大きな節税効果が期待できるでしょう。また、受け取る年金も公的年金等控除の対象となり、所得控除が適用されます。税制優遇を受けながら将来への備えができます。

#iDeCo(個人型確定拠出年金)
掛金、運用で出た利益、年金として受け取る給付金の全てに対して税制優遇が受けられるのがiDeCoです。掛金は全額が所得税控除の対象となり、所得税や住民税の節税対策になります。さらに、利息や配当、売却益などの運用益は全額非課税です。年金または一時金を受け取る際も、年金として受け取った場合は公的年金等控除の対象に、一時金として受け取った場合は退職所得控除の対象となります。

#個人年金保険
生命保険料控除が適用されます。ただし、控除額は年間で最大4万円までです。

#小規模企業共済
掛金は全額が少額企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。また、小規模企業共済では共済金の受け取りを一括、または分割いずれかの選択が可能です。一括で受け取った場合は、退職所得控除として税負担が軽減されます。分割で受け取った場合は、公的年金と同じ公的年金等控除の対象となります。

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