• 個人事業の扶養の範囲は所得48万円以下:判定方法を解説
公開:2021/08/07  更新:2021/07/15

個人事業の扶養の範囲は所得48万円以下:判定方法を解説

扶養の範囲をあらわす言葉として、「103万円の壁」「130万円の壁」などがあります。年収103万円以下であれば税金計算上の扶養親族等となって世帯主等の所得税・住民税が優遇され、130万円未満であれば社会保険の扶養に入って保険料が免除されるというものです。

ただこれはパートタイマー向けの話であり、個人事業主の場合は特に税金計算上の扶養範囲を正確に表しているとは言えません。
実際には確定申告の際に計算する所得額が48万円以下であれば扶養範囲内とされており、給与所得者の場合は所得計算上年収から差し引く金額が最低55万円あるため、年収103万円以下が扶養範囲内です。個人事業主の所得額は青色申告を行うかでも変化するため、ここでは扶養範囲の判定方法を説明します。

判定基準となる事業所得の計算方法

事業所得の基本的な計算式は、「収入金額 - 必要経費」です。
例えば収入金額が110万円であっても、必要経費が70万円であれば差し引き40万円で事業所得48万円以下となるため、扶養の範囲内となります。
なお社会保険の扶養範囲である年収130万円未満は、個人事業主でも変わらないと考えて下さい。厳密には所得で判定して130万円未満で良いのですが、必要経費の範囲が社会保険の運営者によって異なる上に、税金計算上の必要経費よりかなり限定されるからです。

青色申告では10~65万円の特別控除を差し引ける

確定申告前に青色申告の承認申請を行い、確定申告の際には青色申告決算書を添付することで、事業所得額は下記のようになります。

収入金額 - 必要経費 - 青色申告特別控除

青色申告特別控除は、青色申告決算書の作成範囲や帳簿の整備状況により、10万円・55万円・65万円の3つから選択できます。

確定申告書と青色申告決算書を電子送信することにより65万円の青色申告特別控除が差し引けるとすれば、事業所得48万円以下は収入金額-必要経費の差引金額が113万円以下で満たします。

所得48万円超133万円以下は配偶者特別控除の対象

018年からは「150万円の壁」なるものも登場していますが、これは所得が48万円を超えても95万円以下であれば、所得48万円以下の配偶者を扶養している世帯主等と同じ額だけ配偶者特別控除により課税所得を低くできるというものです。

また95万円を超えても133万円以下であれば、配偶者特別控除の額は縮小されますが課税所得を低くすることはできます。

ただしこれは、配偶者の所得が一定額以下の場合だけ認められていることに注意する必要があります。子・老親などが所得48万円を超えたら、課税所得を低くすることはできません。

青色申告者は確定申告必須

年収103万円以下のパートタイマーは、通常確定申告は行いません。個人事業主は原則として確定申告が必要となりますが、青色申告特別控除を差し引かなくても事業所得が48万円以下になるのであれば、確定申告しないと扶養になれないわけではありません。

しかし青色申告特別控除は確定申告を行わないと差し引けないので、この特典を受けるには必ず確定申告を行ってください。

55万円以上の特別控除は期限内申告が必要

55万円・65万円の特別控除を受けるには、複式簿記の知識を用いて記帳、もしくは会計ソフトを使用して仕訳帳や総勘定元帳を出力できるようにする必要があります。そして青色申告決算書においても、貸借対照表を記載しなければなりません。

さらにもう1つ確定申告義務と関連して注意すべきは、期限後申告になると10万円しか差し引けなくなるということです。

源泉徴収が行われるライター報酬を得ている場合は、扶養範囲内の方は源泉徴収を取り戻せる還付申告となります。

ただ55万円以上の特別控除で扶養範囲になるのであれば、サラリーマン向けに言われているような5年の間に還付申告を行えばよいわけでは無く、期限内に申告してください。そうしないと、扶養から外れてしまいます。
申告期限は新型コロナの影響で4月15日頃になった年もありましたが、例年は3月15日頃です。

執筆者 石谷 彰彦
略歴 1977年生まれ。システム開発会社・税理士事務所に勤務し、行政非常勤職員や個人投資家としての経験も持つ。FPとして、確定申告・個人所得税・社会保障関係を中心にライティングやソフト開発を行う。近年は個人の金融証券税制に重点的に取り組み、上場株式等課税方式有利選択ツールを公開。

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